ISO13485とは
この規格は,医療機器の設計・開発,製造,保管及び流通,据付け,附帯サービス,最終的な廃棄・処
分,並びに関連する活動(例 技術支援)の設計・開発及び提供を含む医療機器のライフサイクルの一つ
以上の段階に関係する組織が使うことができる品質マネジメントシステムの要求事項を規定する。
製品(例原料,部品,組立品,医療機器,滅菌サービス,校正サービス,流通サービス,保守サービス)をそのような組織に提供する供給者又は外部パーティも,この規格の要求事項を使用することができる。供給者又は外部パーティは,この規格の要求事項を満たすことを自主的に選択できるし,又は契約によって満たすことを要求される場合がある。
幾つかの法的管轄においては,医療機器のサプライチェーンの中の様々な役割の組織に対して,品質マ
ネジメントシステムの適用に対する規制要求事項がある。このため,この規格は,組織に対して次を期待
している。
- 適用される規制要求事項におけるその役割を明確にする。
- この役割における当該活動に適用される規制要求事項を明確にする。
- 適用される規制要求事項を,その品質マネジメントシステム内に含める。
適用される規制要求事項における定義は国によって,また,地域によって異なる。組織は,医療機器が
使用可能とされている法的管轄における規制の定義に照らして,この規格の用語がどのように訳されてい
るか理解する必要がある。
さらに,この規格は,品質マネジメントシステム及び組織の要求事項に適用される顧客要求事項及び適
用される規制要求事項を満たす組織の能力を,組織自身が内部で評価するためにも,また,審査登録機関
を含む外部パーティが評価するためにも使用することができる。この規格が規定する品質マネジメントシ
ステムの要求事項は,安全及び性能に対する顧客要求事項並びに適用される規制要求事項への合致に必要
な製品に対する技術的要求事項を補完するものであることを強調しておく。
品質マネジメントシステムを採用することは,組織の戦略的な決定である。組織の品質マネジメントシステムの設計及び実施は,次によって影響を受ける。
a) 組織的環境,環境の変化,及び組織的環境が医療機器の適合性に与える影響
b) 組織のニーズの変化
c) 組織固有の目的
d) 組織が提供する製品
e) 組織が採用するプロセス
f) 組織の大きさ及び構造
g) 組織の活動に適用される規制要求事項
この規格は,品質マネジメントシステムの構造の均一化,文書の画一化又はこの規格の箇条の構造に文
書化の構造を合わせることを意図していない。
医療機器には,様々な種類があり,この規格の特定の一部の要求事項は,特定の医療機器のグループに
だけ適用される。これらの医療機器のグループは,箇条3 に定義している。
0.2 概念の明確化
この規格の次の用語及びフレーズは,次に記載する意味で用いられる。
- 要求事項が“適切な場合”という用語で特定された場合,組織が他の方法によることの正当性を示す
ことができなければ,その要求事項の適用は“適切”であるとみなされる。次のために必要であるならば,その要求事項は“適切”であると考えられる。
- 製品が規定要求事項を満たす。
- 適用される規制要求事項に適合する。
- 組織が是正処置を実行する。
- 組織がリスクを管理する。
- “リスク”という用語が用いられた場合,この規格の適用範囲内におけるこの用語の利用は,医療機
器の安全上及び性能上の要求事項,又は適用される規制要求事項への適合に関連する。
- 要求事項が,“文書化する”という用語で要求された場合,確立し,実施し,維持することが要求され
る。
- “製品”という用語が用いられた場合,それは“サービス”も意味する。“製品”は,意図するアウト
プット,顧客から要求されたアウトプット,又は製品実現プロセスから得られた意図するアウトプッ
トへ適用する。
- “規制要求事項”という用語が用いられた場合,それは,この規格の利用者に適用される全ての法律
上の要求事項を包含している(例えば,法律,規則,条例,指令)。“規制要求事項”という用語の利
用は,品質マネジメントシステム及び医療機器の安全又は性能に関する要求事項に限定される。
この規格では,次のような表現形式を用いている。
- “~する”(shall)は,要求事項を示す。
- “~するとよい”(should)は,推奨を示す。
- “~してもよい”(may)は,許容を示す。
- “~することができる,~できる”(can)は,可能性又は実現能力を示す。
“注記”と記載されている情報は,その関連する要求事項を理解するための,又は明確にするための手引である。
0.3 プロセスアプローチ
この規格は,品質マネジメントに対するプロセスアプローチに基づいている。インプットを受け,それ
らをアウトプットに変換する活動は,プロセスとみなすことができる。一つのプロセスからのアウトプッ
トは,多くの場合,次のプロセスの直接のインプットとなる。
効果的に機能するために,組織は,数多くの関連し合うプロセスを明確にし,管理する必要がある。組
織内において,所望の結果をもたらすために,プロセスを明確にし,その相互関係を把握し,運営管理す
ることと併せて,一連のプロセスをシステムとして適用することを,“プロセスアプローチ”という。
品質マネジメントシステム内において,このようなアプローチを用いる場合,そのアプローチは次の重
要性を強調する。
a) 要求事項の理解及び適合
b) 付加価値の観点から,プロセスを考慮すること。
c) プロセスパフォーマンス及び有効性の結果を得ること。
d) 客観的測定に基づく,プロセスの改善
0.4 JIS Q 9001 との関係
この規格は独立した規格であるが,既にJIS Q 9001:2015 に置き換わっているJIS Q 9001:2008 に基づい
ている。ユーザの便宜のため,附属書B に,この規格とJIS Q 9001:2015 との対応を示す。
この規格は,医療機器のライフサイクルの一つ以上の段階に関与する組織に適用される品質マネジメン
トシステムのための適切な規制要求事項の世界的な整合を容易にすることを意図している。この規格は,
医療機器のライフサイクルに関与する組織のための幾つかの特別な要求事項を含んでおり,規制要件とし
て適切でない,JIS Q 9001 の要求事項の一部を除外している。このような除外があるため,組織の品質マ
ネジメントシステムがこの規格に適合していても,除外したJIS Q 9001 の要求事項を満たしていなければ,組織はJIS Q 9001 への適合を主張することはできない。
0.5 他のマネジメントシステムとの両立性
この規格には,環境マネジメントシステム,労働安全衛生マネジメントシステム,財務マネジメントシ
ステムなど他のマネジメントシステムに固有な要求事項は含まれていない。しかし,この規格は,組織が
品質マネジメントシステムを,関連するマネジメントシステム要求事項に合わせたり,統合したりできる
ようになっている。組織がこの規格の要求事項に適合した品質マネジメントシステムを構築するに当たっ
て,既存のマネジメントシステムを適応させることも可能である。
「医療機器-品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項 JIS Q 13485:2018(ISO 13485:2016) 序文より」
医療機器-品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項 JIS Q 13485:2018(ISO 13485:2016)
目 次
ページ
0 序文 1
0.1 一般 1
0.2 概念の明確化 2
0.3 プロセスアプローチ 3
0.4 JIS Q 9001 との関係 3
0.5 他のマネジメントシステムとの両立性 3
1 適用範囲 3
2 引用規格 4
3 用語及び定義 4
4 品質マネジメントシステム 8
4.1 一般要求事項 8
4.2 文書化に関する要求事項 9
5 経営者の責任 11
5.1 経営者のコミットメント 11
5.2 顧客重視 11
5.3 品質方針 11
5.4 計画 11
5.5 責任,権限及びコミュニケーション 11
5.6 マネジメントレビュー 12
6 資源の運用管理 13
6.1 資源の提供 13
6.2 人的資源 13
6.3 インフラストラクチャ 13
6.4 作業環境及び汚染管理 13
7 製品実現 14
7.1 製品実現の計画 14
7.2 顧客関連のプロセス 14
7.3 設計・開発 15
7.4 購買 17
7.5 製造及びサービスの提供 18
7.6 監視機器及び測定機器の管理 21
8 測定,分析及び改善 21
8.1 一般 21
8.2 監視及び測定 21
8.3 不適合製品の管理 23
Q 13485:2018 (ISO 13485:2016) 目次
ページ
8.4 データの分析 24
8.5 改善 24
附属書 A(参考)JIS Q 13485:2005 と JIS Q 13485:2018 との内容の比較 26
附属書 B(参考)JIS Q 13485:2018 と JIS Q 9001:2015 との関係 30
参考文献 36
解 説 38